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親の過保護により東大に入った人間の末路-Part3-【初めて出会った人間】

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親の過保護により東大に入った人間の末路-Part1-【イントロダクション】

親の過保護により東大に入った人間の末路-Part2-【人となり】

こんな僕はとにかく人あたりがよかった

悪く言えば八方美人、うわべだけの人間

僕は人の奥深くには入らないし、向こうも僕の奥深くには入ってこないような人間関係が僕の周りには大量に存在していた。

 

僕はそれで今まで生きてこれたし、そもそも楽しかった。

深くお互い立ち入らないから、傷つくこともなく、ストレスも感じていなかった。

おそらくこれは僕という人工知能が導き出した人付き合いの最適解だったのかもしれない。(それは単なる局所解だったのかもしれない)少なくとも今までの僕は最適解だと思っていた。

 

友人たちが僕に対して向けている視線は全て、僕のユーモアや勉強、技術に対するものである。

僕が何を考えているかについて深く入ってくるような人間はいなかったし、僕も相手が何を考えているか深く入ろうとはしなかった。

深く入ると相手が気を悪くするかもしれないと思って深入りはしてこなかった。(結局それは保身なのだが)

だから僕は人との会話は長く続かないし、話が上手な人でも僕との会話は苦労してきたのだろう。

僕は友人を単なる記号として捉えていたのだろう。

 

しかし、僕の人生を揺るがす衝撃に出会ってしまった。

僕にはかねてから交際していた彼女がいた。

中高一貫男子校出身の僕にとって恋愛というのは自分の中で確実に欠けていたもの。

そして女性の扱いなどというものは全くわからず、知らずしらずのうちに彼女を傷つけていた。

彼女は非常に奥ゆかしい性格なので、自分の思っていることをあまり表には出さなかった。

だから彼女が傷ついているということなどつゆしらず。

他の友人たちと同じように彼女に対しても自分が考えている、心の奥底にある気持ちというものは表現しなかった。

彼女を記号としてとらえていたからだ。

 

そんな彼女がついに痺れを切らして僕に言ってきた

「あなたと話しているとロボットと話しているような感じがつねにする。私のことなんて興味ないのかなって。私のこと本当は好きじゃないんでしょ?」

いつもの僕なら平然と当たり障りのないことを言うつもりだった。

しかし、この時の彼女の言葉が僕の心の奥底の何かに触れた。

 

次の瞬間、僕は生まれて初めて人と相対し、涙を流した。それも嗚咽と呼べるくらいの泣き方だ。

僕は次の言葉が出てこなかった。

頭の中には言いたいことがたくさん浮かんでいるが、それが声となって出てこない。

声に出すと、涙も声も止まらずに収拾がつかなくなりそうだから。

僕はこの感情の爆発を抑えながら、必死に彼女の質問に答えた。

 

彼女をできるだけ傷つけないように。

婉曲的な表現で答えた。

そして、僕の正直な感情を曲げることさえ辞さなかった。

 

 

彼女も泣いていた。

 

 

これが人間の感情と感情がぶつかり合う瞬間だということを20年近く生きてきて初めて実感した。

僕の涙はもう止まらなかった。

僕の心の中にここまで深く刺さる問いを投げかけてきてくれる存在に生まれて初めて出会ったのだ。

僕の親ですらできなかったことをこの女性はやってのけた。

 

僕の人間的な部分に興味を持って、そこまで降りてきてくれた人間に初めて出会い、僕は生まれて初めて本当の涙を心から流した。

そして、僕の人間としての空虚さに気付かされた。

この涙は感動なのか、喜びなのか、苦しみなのか、落胆なのかわからない。

言葉にならない感情が僕の中で結露して初めて頬を伝った。

確実に僕の中で何かが変わった瞬間で、これまでの人生の中で一番僕の感情が揺さぶられた瞬間であった。

 

彼女は僕の全てをほぼ見抜いていた。

僕が彼女を記号として考えていたこと。

女の勘というやつは本当によく働く。

 

記号としての彼女が、人間としての彼女に昇華された。

今まで全ての人間を記号とみなしてきた僕が初めて記号とはみなせない人間に出会ってしまった。

記号に僕の感情を揺さぶることはできない。

でも人間ならできる。

そのとき、今まで失っていたものを一気に手に入れたような気がした。

 

人間と人間が感情を揺さぶりあい、激しくぶつかる姿は美しい。

今の社会にこのようなことができる人間はほとんどいないのではないか。

失っていたものを気づかせてくれる稀有な存在に僕はこうして包み込まれた。


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